テーブルマジックの王道といえばコインマジックです。
舞台を整えた出し物だけでなく、お酒の席や会話のつかみなど、さまざまな場所で活躍してくれるコインマジックですが、その基本といえばやはりコインを隠す技術でしょう。
今回は、コインマジックに欠かせない基本技法「クラシックパーム」について、やり方や練習方法、上達のコツなどを解説していきます。
目次
クラシックパームとは?
マジック用語であるクラシックパームの「パーム」とは、手の中に物を隠し持つ技法のことをいいます。
バームと呼ぶこともあります。
もちろん、ただ隠しただけではマジックの技術とはいえません。
手の中に隠しながらも「手の中になにもないと思わせる」技術、それがパームです。
フィンガーパームやサムパームなど隠し方にも種類がありますが、一番最初に覚えるべきコインマジック技術の基本中の基本はクラシックパームです。
クラシックパームは、手のひらにコインを隠すテクニックです。
「手を緩やかに曲げた中にコインを隠し持っておく」
言葉にすれば簡単なことのように思えますが、自然に手のひらへコインを持っていき、コインを持った状態でアクションを続けるというのは、簡単そうに見えてなかなか難しいものです。
クラシックパームは多くのコインマジックに用いられているテクニックなので、コインマジックを覚えたい人にはぜひ習得してほしい技法になります。
【基本】クラシックパームのやり方やコツ
パームは自分の手を使って行うコイントリックなので、この位置、この角度でやれば誰でも完璧!という必勝パターンはありません。
自分の手の形、サイズ、どう動くかを把握し、それに見合ったコインを選ぶことがパームを習得する第一歩です。
自分に合うサイズのコインの動かし方がわかれば、それを応用して大きなコインや小さなコインでもパームすることができるようになります。
それでは、コインマジック基本技術のクラシックパームのやり方、実際の練習方法やコツをみていきましょう。
10円?100円?500円?手の大きさに合わせて選ぶ
手の大きさは人それぞれです。
同じサイズのコインでも、手の大きい人には小さかったり、手の小さい人には大きかったりします。
小さすぎるとコインを支えるために手を握りこんでしまいますし、大きすぎると隠すだけで手の動きが制限されて自然な演技ができなくなることもあるでしょう。
手の力を抜いたときに曲がっている角度、それが自然な角度です。
その角度で隠せるサイズのコインが、自分の手のサイズに合ったコインということになります。
実際に手の角度を作ってコインを挟んでみるのが、自分に合ったコインを探す簡単な方法です。
手が開いてしまったり、逆に握りこんでしまうようならサイズが合っていない可能性があります。
隠しているはずのコインが指の隙間など手の甲側から見えてしまう「パーム漏れ」を防ぐためにも、コイン選びは大切です。
ちなみに、プロのマジシャンがよく使っているのは500円玉に近いサイズの外国硬貨。
アメリカのハーフダラーやイギリスのペニーコインが多く、ハーフダラーは銀貨、ペニーコインは銅貨と舞台での見栄えもよいコインです。
クラシックパームのやり方
クラシックパームに限らず、パームを行う際に大事なのは余計な力を抜くことです。
『持つ』ではなく『引っかける』『手のでっぱりに乗せる』感覚でできるように、何度も練習しましょう。
- できるだけ手の力を抜いて、親指・人差し指・中指の3本でコインを挟む
※このとき、親指以外の指は自然な感じで揃えておく - 親指を離し、中指と薬指でコインを支えながら指を手のひらに向けて曲げる
- 指先の力で手のひらにコインを押しつけ、親指と小指のつけ根を内側へ少し寄せる
※手のひらにくぼみを作るイメージ - 指を離し、手のひらだけでコインを支える
このように、簡単なステップでできます。
あまり力を入れすぎるとこわばって不自然な手の形になってしまうので、豆腐などの柔らかいものをつぶさずに持つようなやさしい力加減でコインを持つようにすると、観客に違和感を与えない手の形になりますよ。
クラシックパームの練習方法&コツ
まずは自然な手の形、緩やかに丸められた手を意識してみましょう。
力を入れた状態と入れていない状態の違いを把握することで、成功と失敗の違いを理解しやすくなります。
クラシックパームの場合は、自然に丸められた手のひら、親指側の大きく膨らんだところにコインを挟むようにして持ちます。
最初はコインを持った状態からはじめるのではなく、反対の手でコインを押し付けて挟む練習から行うのも方法のひとつです。
クラシックパームの練習におすすめなのが、鏡を使ったトレーニングです。
観客視点で手の動きを見ることで、自然な形になっているか、隠していることがわかる動きになっていないかなど、客観的に自分のプレイを観察することができます。
人それぞれ、コインをキープしやすいポジションは異なります。
キープしやすい位置を見つけて、より自然に見える手の形が作れるように練習を重ねましょう。
消毒用アルコールで手汗対策
マジックは手のコンディションが非常に重要です。
とくにパームは手のひら側、よく汗をかく部分を使うので、手汗対策は欠かせません。
手の湿り具合によってはコインが滑り、失敗につながることもあります。
そこで使いたいのが手指の消毒用アルコールです。
アルコール分が揮発する際、一緒に手の表面の余計な水分も飛ばしてくれるので、サラサラしていてかつ滑りにくいマジックに適したコンディションにしてくれます。
長時間のマジックを披露するのであれば、塗ったあとサラサラするタイプのハンドクリームを使うのもおすすめです。
【クラシックパーム応用編】コインマジック
クラシックパームができるようになったら、コインマジック入門「チンカチンク」に挑戦してみましょう。
コインの瞬間移動とも呼ばれる移動マジックで、テーブルの上に置いたコインに手を乗せると、もうひとつの手の下に移動しているというものです。
コインの瞬間移動マジック~やり方~
何枚のコインでやってもよいのですが、この記事では観客を楽しませつつ演技が短時間で終わる4枚のコインで説明していきます。
- ハンカチなどの布の四隅にコインを1枚ずつ置く
- 右手と左手で奥と手前のコインを1枚ずつ隠す
- 手をどけると片方は0枚、もう片方は2枚になっている
- 2枚になったほうはそのままに、残った1枚ずつのコインを隠す
- 手をどけると片方に2枚コインがある
- 2枚ずつ片手で隠す
- 手をどけると3枚と1枚に移動している
- もう一度隠す
- 4枚全てが一か所に集まっている
コインの瞬間移動マジック~種明かし~
このマジックは、片方の手にコインを置いたとき、反対の手ではコインを隠し持つというトリックを用いています。
トリックのキーは手の振りを大きくして直線的な動きを避けることと、5枚目の「エキストラコイン」を使うことです。
親指でコインを手のひらに押し付けていないので、少し難易度が高いかもしれません。
やり方の【1】で4枚のコインをテーブルに準備する前に、あらかじめクラシックパームでコインを1枚隠し持っている状態ではじめます。
4枚のコインを準備したら【2】の動作をします。
コインをパームしている手で観客側にあるコインを隠し、持っていたコインを加えて2枚にします。
もう片方は手と手首の間にある段差にコインを隠します。
【3】の動作で、コインを隠した手を体側に引いてコインがなくなったことを見せます。
2枚のコインがある手も同時にどけると、観客の目は移動した(ように見せた)2枚のコインに目がいき、隠したコインから注意を外すことができます。
そのまま【4】の動作に移ります。
手首の段差でコインを隠したまま移動させながら、前の隅にあるコインを手で覆います。
完全に覆う前に隠しておいたコインも手の下に滑らせ、2枚のコインを作ります。
もう片方の手は【2】のときと同じようにコインを手首の段差に隠し、【5】の動作で【3】と同じようにコイン移動を印象づけます。
【6】【7】も同様に、1枚を手首に隠してもう片方で隠していた1枚を加えることで、コインが移動したように見せています。
【8】では「隠したコインを反対の手に素早く渡す」という難しい動作を要求されますが、手を近づけたりクロスさせたりといった動きをこれまでの演技で盛り込むことで、違和感を与えないように仕向けてコインの移動を行います。
【9】で最後に残ったコインは観客の目に入れてはいけないエキストラコインです。
座ってのプレイであれば足の間に落としたり、立って行っているのであればわからないようにクラシックパームで隠したりと、観客の意識が逸れるまで見せないようにします。
このトリックはコインを滑らせるので、テーブルとコインの擦れ合う音が聞こえないように、必ず下にはハンカチやマットなどを敷いて防音対策をとりましょう。
ハンカチならば少々厚手のものがよいです。
クラシックパームを練習して応用的なマジックに挑戦しよう
クラシックパームはコインマジックの基本中の基本です。
そのため、クラシックパームを覚えることができればほかのパームにも応用ができますし、パームを使ったさまざまなマジックへ挑戦できます。
パームを使うマジックはコインマジックだけではありません。
トランプを使うカードマジックや、なにもないところからハンカチや花を取り出すマジック、指輪マジックにもパームを使ったトリックがあります。
どのマジックがどんなトリックを使っているのか興味がある人は、「Magic Movie Japan」というマジックの情報検索サイトがあるので覗いてみてはどうでしょうか。
世界で活躍するマジシャンがその多彩な技をひとつずつ動画にして紹介してくれているので、数多くのマジックに触れることができます。
同マジシャンによる種明かし動画も一緒に公開されているので、パームを使ったマジックを探すことも可能。
マジックのジャンル、プレイの難易度によってカテゴライズされているため検索も簡単です。
クラシックパームで色んなものを手のひらに隠しちゃおう
クラシックパームをはじめ、パームの技術は「手になにも持っていない状態」に見せかけます。
持っているけれども悟らせない。
マジックはもちろん、サプライズにももってこいのテクニックです。
お誕生日パーティーや記念日のお祝い、それから、プロポーズにも。
一味違った演出で、受け取る人が笑顔になるサプライズを提供してみませんか。
この記事のまとめ
- ベストキープポジションは人によるので、自分に合った位置を見つけよう
- 手の力を抜いて、自然な手の形にするのがコツ
- 手汗はパームの大敵!消毒アルコールでしっかりケアを
- クラシックパームができれば、いろいろなものを隠せちゃう!
- 日常生活で手品をさらりと披露しよう