「フォールスシャッフル」というシャッフルをご存知ですか?
マジックに有用なカードコントロールの方法で、カードをよく混ぜているように見せ、観客の油断や安心を誘うテクニックです。
これを覚えれば、カードマジックを披露するときに、タネや仕掛けをよりわかりにくくすることができます。
「カードを混ぜてほしい」と言われても慌てずに対応できるでしょう。
今回はこのフォールスシャッフルについて、実践で使えるやり方など詳しく解説していきます。
目次
フォールスシャッフルとは
フォールスシャッフルは、カードを混ぜたように“見せかける”シャッフルのことを指します。
実際には混ざっていない、もしくは混ぜていたとしても同じ位置に戻っている。
そのため、シャッフルしていてもタネや仕掛けに影響しないのです。
もちろん、一朝一夕で身につくテクニックではありませんし、どんなに腕を磨いても本番で失敗することもありえます。
ですが、フォールスシャッフルを加えることで演技の幅が広がり、披露するマジックのレベルもぐっと上がることは間違いないでしょう。
トランプのイカサマテクニック
フォールスシャッフルは、ポーカーなどのカードギャンブルから生まれたいわば“イカサマテクニック”です。
カードギャンブルは、基本的に数字が大きいカードを持っている方が勝ちですから、自分に数字の大きいカードが、相手に数字の小さいカードが渡るようにするには、カードを配る段階でイカサマをするのが確実です。
しかし、当然相手もイカサマを警戒しているので、カードをシャッフルせずにはじめるわけにはいきません。
そこで生まれたのが、シャッフルの形をしているけれども実際にはカードが混ざっていないテクニック「フォールスシャッフル」というわけです。
「フォールス」英語の意味は?
フォールスの綴りは false と書きます。
反対語は真実を意味する true です。
フォールスは英語で「嘘の、虚偽の」「見せかけの、惑わせる」といった意味があります。
見た目はシャッフルしているのに、実際にはカードが混ざっていない“見せかけの”シャッフルであることから、フォールスシャッフルと呼ばれているのです。
フォールスシャッフルのやり方
フォールスシャッフルがどんなものかわかったところで、実際にフォールスシャッフルをやってみましょう。
この記事で紹介するのは「オーバーハンドシャッフル」と呼ばれるシャッフルで行うフォールスシャッフルです。
見慣れた形式のヒンズーシャッフルやテーブル上で互い違いにするリフルシャッフルとは違い、カードを上から順番に1枚ずつスライドさせていくやり方です。
慣れるまではわかりやすいようにカードの山札(デック)を半分表に返して、真ん中1番目のカードをキーカードとしてきちんとできているか確認しながら行いましょう。
フォールスシャッフルのやり方を解説
利き手が右という前提で説明していきます。
利き手が左の人は、やりにくい場合は左右反転してプレイしてください。
やり方
- 左手でデックを縦向きに手のひらに乗せ、半分の量を右手で取る。
※これを右手パケット、左手のものを左手パケットと呼ぶ - 右手パケットの上から数枚(6~8枚がおすすめ)を1枚ずつ、左手パケットに左手親指でスライドさせて乗せる。
- 残りの右手パケットを左手パケットに重ねる 。
※このとき、パケットの間に左手人差し指を挟んでおく。(マジック用語でブレイクと呼ぶ) - 挟んだ指から下のパケットを右手に移動させる。
(右手パケットと左手パケットが入れ替わる形になる) - 入れ替わった右手パケットの上から数枚(最初にカード移動した枚数と同じ数)を左手パケットにスライドさせる。
- 残りの右手パケットを左手パケットに重ね、ひとつのデックにする。
以上の動きを解説すると、実際に移動しているカードは半分に分けたうちの真ん中の数枚だけです。
その数枚が右手と左手をいったりきたりしているだけで、デック全体はまったく混ざっていません。
また、1枚ずつスライド移動することによって移動したカードの順番も最終的に元通りになります。
バレないようにうまくやるコツ
オーバーハンドシャッフルをフォールスシャッフルとして行う際には、移動しているカードが同じものだとわからないようにするのがポイントです。
そのためには、一つひとつの動作を滑らかに、つっかえないようにすることが大事です。
動作にもたつくと、そこになにかあるのではと観客の注目を集めてしまいます。
それから、あえてカードをきれいに整えないという手もあります。
プロのマジシャンはあまり使わない手ですが、デックがきれいに整っていないことでどの位置から分けて重ねたのかをごまかすことができるでしょう。
ただし、この方法を使う場合はデック全体をやや乱しておかないと、かえって乱れた部分だけが目立ってしまうので注意が必要です。
フォールスシャッフルもある
フォールスシャッフルの種類として、「フォールスカット」もあります。
通常のシャッフルとカットではシャッフルの方がより混ぜられているように、フォールスカットもフォールスシャッフルと比べると混ざっているように見えません。
ブラフ(はったり)としての効果が弱いため、メインのシャッフルにするにはいささか頼りない技法です。
フォールスシャッフルの最後に、仕上げや後押し感覚で行いましょう。
フォールスシャッフルのやり方を解説
シンプル・フォールスカット
ごくごくシンプルな、デックを半分に分けるだけのカットのやり方です。
利き手を右として説明していきます。
やり方
- 左手にデックを縦向きで持つ。
※ 親指と中指、薬指、小指をデックの両サイドに、人差し指をデックの上エンドに当てる形(ディーリングポジション) - デックを分けるために右手を被せながら、左手人差し指でデックの下半分ほどを手首側に押し出す。
- 右手で下半分に分けられたパケットを取り、テーブルに置く。
- 左手に残った上半分のパケットを、テーブルに置かれたパケットの上に同じ向きで置く。
下半分、上半分の順でテーブルに置くだけの簡単なカットです。
これだけでは分けられていないことがすぐにわかってしまうので、シャッフルの仕上げに「上下を入れ替えたので、トップカードには何も仕込まれていませんね」とブラフを張りましょう。
【上級編】フォールスカット・フラリッシュ
手の中で3つに分けたパケットをくるくると回すことでカットしたように見せかけるフォールスカットです。
右手と左手が同時に滑らかに動くことでパケットが回転し、パフォーマンスするだけで楽しんでもらえる技です。
3つのパケットの厚みが違うとカットしていないことに気づかれてしまうので、できるだけ均等に分けることが肝心です。
左右の手が別々の動きを取れるように練習しなければ、簡単には習得できません。
フォールスカットの注意点
フォールスカットはフォールスシャッフルよりも簡単ですが、それだけに見抜かれやすい技でもあります。
注目を集めているときに取り入れるのはやめておいた方がいいでしょう。
また、見た目の華やかさが売りのフラリッシュは、何度も披露するとくどく感じてしまいます。
あくまで主役はトランプマジックテクニックですから、あまり頻繁に組み込まないようにしましょう。
フォールスシャッフルなどのいろんな種類のシャッフルを取り入れてみよう!
今回取り上げたフォールスシャッフル、フォールスカット以外にも、カードシャッフル・カードカットにはさまざまな種類があります。
数多くのシャッフルを取り入れることで、マジックはその華やかさを増すことでしょう。
とくにプロのマジシャンが扱う技は、見た目だけでなくマジックの仕掛けやトリックのカモフラージュとしても優れているものばかりです。
「Magic Movie Japan」というマジック情報サイトには、世界で活躍するマジシャンがその手腕を遺憾なく披露したマジック動画が集められています。
マジックのジャンルや難易度別にカテゴライズされているので、自分のレベルに合ったものから到達したい目標レベルまで、多彩なテクニックを学ぶことができます。
もちろん、マジックの花形・カードマジックの動画も満載です。
MMJでたくさんのシャッフルテクニックを探してみてはどうでしょうか。
フォールスシャッフルで観客の目を欺こう
マジックで観客が一番期待しているのは予想を裏切られることです。
「ずっと見ていたのにいつの間にかコインが消えていた」
「ちゃんとシャッフルされていたトランプからたった1枚を見抜いた」
など、予想を裏切られるということは驚きに繋がります。
この驚きを意図的に、そして効果的に与えるためにフォールスシャッフルはあります。
「シャッフルする=カードがバラバラになる、ランダムになる」という日常の認識からくる思い込みを利用したフォールスシャッフル。
カード当てやカード読心術マジックなどで、観客の目を欺き大いに驚かせ、楽しいひとときを提供しましょう。
この記事のまとめ
- フォールスシャッフルは“見せかけ”のシャッフル
- ギャンブルから生まれたイカサマテクニックをマジックに応用した
- 滑らかな動きが観客の目を欺くコツ
- フォールスカットはシャッフルよりも簡単だが見抜かれやすい
- フォールスシャッフルを取り入れてマジックをより華々しく見せよう!