「和妻(わづま)」という言葉を聞いたことがある人は少ないのではないでしょうか。
和妻とは、江戸時代から継承されている日本の伝統芸能であり、一般的な手品とは少し異なります。
日本の伝統芸能と聞いてもピンとこない人が多いかもしれないので、この記事では和妻の魅力や華麗なパフォーマンスを動画付きで紹介します。
目次
和妻とは
まずは「和妻」について解説します。
歴史ある伝統芸能「手妻」を意味する言葉
和妻とは古くから日本に受け継がれる、日本古来の伝統奇術のことを意味します。
和妻は、江戸時代に生まれた「手妻(てづま)」という言葉が派生したものです。
手妻という言葉も古くから日本に伝わる手品や奇術を指し、「稲妻のように素早い手の動き」が由来とされています。
明治時代に西洋の手品が日本に輸入されたことがきっかけで、西洋奇術を「洋妻(ようづま)」、日本古来の奇術を「和妻」と区別するようになりました。
代表的な和妻には、紙で作った蝶を扇子で扇いで生きているかのように見せる「胡蝶の舞(こちょうのまい)」や、何も入っていないはずの箱からいろいろな物が出てくるという「蒸籠(せいろ・せいろう)」などがあります。
何をもって和妻と呼ぶのか線引きは難しいところですが、日本奇術協会理事であり、日本古典奇術師の藤山新太郎さんによると、以下のことがポイントとなります。
- 日本の伝統文化の継承
- 作品小道具の継承
- 口伝の継承
- 演技や型の継承
- 元々の型の継承
これらのことを全てクリアして、晴れて手妻師と呼ばれるようになるのですが、無駄のない美しい動きで披露することは簡単ではありません。
藤山新太郎一門
先述でも触れている藤山新太郎さんは、世界的にも名の知れた手妻師です。
本記事で紹介する「蝶のたはむれ」や「水芸」などの和妻を得意とする藤山新太郎さんには、藤山晃太郎さんや藤山大樹さんなど実力派の弟子がいます。
紋付袴の姿での手妻のパフォーマンスに限らず、洋装でのステージマジックも行う幅広いテクニックをお持ちの方です。
手妻を継承するマジシャンは数少ないので、こうして日本伝統が受け継がれていくことはとてもありがたく、素晴らしいことですね。
和妻ならではの魅力
私たちが慣れ親しんでいるマジックとは一味違い、和妻には和妻ならではの魅力があります。
見栄えや所作が美しい
和妻の魅力は、なんといっても見栄えや所作が美しいことにあります。
舞台芸術と表現することもできるくらい、手妻師の1つひとつの動きは非常に繊細で、日本人独特の風情を感じることができるでしょう。
世界のマジシャンが演出するようなステージマジックは、ときにダイナミックさを感じるこことがありますが、和妻にはダイナミックさはありません。
可憐に繊細で、美しく魅せることが何よりも大切なのです。
「見立て」の小道具
和妻では実物に似せて作ったものは使われません。
つまり蝶を使いたいときに、蝶の置物などを小道具として使うことはないのです。
蝶を見せたいというときは、半紙などを使ってヒラヒラと飛ばし、花に止まる様子などを再現することで、観客に「あれは蝶なのだな」と思わせるのです。
見る人によって、「視えるもの」(見立てるもの)が異なる場合もあるでしょう。
ストーリー性が感じられる
独特な世界観から、ストーリー性を感じられるのも和妻の魅力です。
ステージマジックであれば、1つひとつのトリックで観客を魅了しますが、和妻では最初から最後までがひとつのストーリーになっており、見終わった後にそのストーリー性についても感動を感じることができます。
種類豊富!華麗な手妻を動画付きで紹介
これまでの説明でなんとなく「日本の伝統芸能」ということは理解できたはずです。
では、次に華麗な手妻(和妻)を動画付きで紹介します。
胡蝶の舞
まずは「胡蝶の舞」という和妻の動画です。
手妻師が蝶を見立てた白い紙を、金と銀の扇子を使って扇ぎ、まるで蝶が生きているかのように演出しています。
扇子には大きな花が描かれていて、その花に上手に蝶が止まる光景は心が温まります。
技術的な派手さはありませんが、洗練された演出で、一貫した美しさを楽しむことができる和妻です。
最初は1匹ですが、夫婦を表す2匹になり、最後の紙吹雪でたくさんの蝶が舞う様子が演出され、蝶の子孫繁栄がストーリー仕立てで描かれているのも大きな見どころです。
水芸
次は「水芸(みずげい)」の動画です。
華やかな着物を着た手妻師が橋の上に上り、白と水色の扇子を開いて、まるで扇子や手のひらで水が出るのをコントロールしているように見せています。
途中で美しい2人の女性が花を持ちながら舞を踊り、その花からもきれいな放物線を描いて水が出てきます。
音楽に合わせて3人の掛け合いが行われ、まるで水が意思を持って動いているように感じるため、見ていて飽きません。
水が意外なところから噴き出るシーンも見どころです。
全体的に華やかな色が使われているため、会場が広くて舞台と客席の距離が遠くても、きっと楽しめる演出です。
金輪舞
次は「金輪舞(かなわまい)」の動画です。
和を感じる曲に合わせ、手妻師が大きなリングを複数使って、つなげたり離したりしています。
ノリノリな動きで速い技を行うときは、アップテンポな曲調でワクワク感を演出し、しっとり落ち着いた演出のときは、少し寂し気なスローテンポの曲調で雰囲気を出していますね。
最後には手妻師が乗って回れるほどの大きな輪を使ってパフォーマンスを行っています。
リングを使う手品師はたくさんいますが、こんなに長くパフォーマンスを行える人はなかなか少ないのではないでしょうか。
実はこのリングには、見立ての役割があります。
さまざまなものに見えてくるので、それぞれの動作で何が表現されているのか注目して見てみてください。
万倍芸
ここでは、たくさんの物が次々と出てくる万倍芸の代表作「蒸籠」と「傘づくし」の動画を紹介します。
蒸籠
まずは「蒸籠」の動画です。
この動画では、手妻師が種も仕掛けもないはずの箱から、白い布を取り出し、次に赤い布を取り出し、さらにたくさんの花を取り出します。
今度はたくさんのカラフルな布が出てきたと思ったら、次は大きな扇子のようなものが出てくるのです。
そしてその扇子が大きく開き、次の瞬間に赤い大きな傘が登場する…という流れです。
最初は小さい布からどんどん大きい布になり、最後はどこから出てきたのかわからない傘まで登場し、一貫してワクワク楽しめるパフォーマンスでしょう。
傘出し
次は「傘出し」の動画です。
アップテンポな曲とともに、スピーディーにどんどん技を披露していきます。
最初は小さな黒い扇子が何個も出てきたかと思えば、それと同時に付けているお面が瞬時に変わり、華麗な展開でどんどん進んでいくので息をつく暇もありません。
そして赤い傘が何本も出てきたかと思えば、最後には巨大な傘が登場し、会場はとても大盛り上がり。
傘を開くたびに紙吹雪が舞い、これが桜の花びらにも粉雪にも見えてくるので不思議です。
使っている小物がこれぞ日本といったものが多いので、日本人はもちろん外国人向け伝統文化ともいえる伝統奇術でしょう。
和妻にもマジックにも人を楽しませる力がある
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プロマジシャンのパフォーマンスを生で見ることができる機会はなかなかありません。
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和妻には独特な魅力がある
和妻は伝統的演芸と表現することができる日本の手品です。
次々といろいろな種類のマジックを披露する手法に対し、和妻はストーリー性を持たせ、同じ道具で最後まで物話を繋げるという独特な魅力があります。
日本奇術の和妻を知ると、古き良き時代から伝わる伝統芸能の魅力に気付くことができるはずです。
この記事のまとめ
- 「和妻」とは日本古来から続く古典奇術を指す言葉
- 和妻の魅力は「見栄えや所作の美しさ」「ストーリー性」「見立ての小物」にある
- 手妻には「胡蝶の舞」「水芸」「金輪舞」「万倍芸」などいろいろな種類がある